下編 力・お金・心 ― 知恩院から大阪へ
朝6時、知恩院の宿坊はまだ静寂の中にあった。人のいない参道を歩いて、清水寺へ向かう。昼間あれほど混み合う石畳が、この時間だけは薄霧と鳥の声に包まれていた。京都には、朝にしか見せない顔がある。権力の象徴・二条城、外交の舞台・京都迎賓館を巡り、最後は大阪へ。江戸は「力の都」、大阪は「お金の都」、京都は「心の都」。力とお金を積み重ねた先に人が最後に求めるのは、結局、心の安らぎなのだと思う。
① 知恩院 和順会館に宿泊

徳川将軍家が力をかけて作った超巨大な寺・知恩院に宿泊します。知恩院は「南無阿弥陀仏」と唱えれば誰でも極楽往生できると説いた法然上人を祀る浄土宗の総本山で、拝観料は無料です。敷地内の宿坊「和順会館」に宿泊しました。
宿泊設備は普通のビジネスホテルとほぼ同じで、オートロック・アメニティ完備です。ただ部屋には仏教に関する本が3冊置かれていて、読んでいると自分が考えてきたことと共通するものを感じました。翌朝6時10分から特別に法話を聞いて朝のお勤めに参加できる体験が提供されています。朝食は2,500円で、漬物・焼き魚・出し巻き卵など京都らしいおかずが揃っていました。
知恩院の三門は国内最大級で、横幅50m・高さ24mの大建築です。特別公開の機会に門の内部に入ることができ、20mの高さから京都の街を一望できました。
② 早朝の清水寺

朝6時台に清水寺へ向かいます。二年坂・三年坂を早朝に歩くと、昼間とは全く違う京都の顔が見えます。人がほとんどおらず、店のシャッターが閉まったまま静かな石畳が続きます。
清水寺は平安時代以前に始まった古いお寺で、京都の出口にあたる東山の急斜面に建てられています。「清水の舞台」として知られる本堂は崖の上に太い木材を組み上げた舞台造りになっています。これは地形上、平地に大きな建物が作れなかったためです。
境内の音羽の滝は清水寺の名前の由来となった場所で、紫外線殺菌された清水を飲むことができます。また裏手には京都の出口にあたる道があり、軍事的な要衝でもあったことが分かります。
清水寺のタ中にある大日如来像は、東日本大震災の津波で流された陸前高田の松の木を地元の学生たちが削って作ったものです。東北地方への思いを寄せることも清水寺の伝統の一つです。
③ 京都御所と京都迎賓館
京都御所は1868年まで天皇が住んでいた場所で、現在は無料で見学できます。江戸時代には将軍の許可なく天皇が外へ出ることはできず、1626年から250年間この門の外に出た天皇はいなかったそうです。
隣にある京都迎賓館は2,000円で見学できます。吉野杉の天井、12mの黒光りする一枚板のテーブル、最大120名を招くことができる「藤の間」など、日本の伝統文化と最新技術を融合させた外交施設です。ここは一部の人のための場所のように見えて、実は国民主権の民主主義において「私たち国民の施設」でもあります。その意識を持って見学すると、また違った楽しさがあります。
④ 二条城
二条城は徳川将軍家が京都へ来た時に拠点として使うお城です。一見すると豪華な集会所のような見た目ですが、本丸の石垣の高さや鉄砲穴、門の構造を見ると明らかに戦争を想定した設計になっています。江戸時代初期の徳川家は、力を見せつけることで戦争を抑止しようとしていたのかもしれません。
二条城の唐門は京都で見たものの中で最も豪華でしたが、誰でも通ることができます。内部では鶯張りの廊下など、二の丸御殿の相観な内装も見学できます。
⑤ 大阪へ・旅の結論
京都から阪急電車で大阪梅田へ移動しました。410円でわずか40分の移動です。大阪は淀屋橋・中之島を中心とした経済の都です。江戸時代に海路で全国の物資を大阪に集め、そこから小船で京都へ届けていたという歴史があります。
大阪の住吉大社の境内には、江戸時代に大阪でビジネスをして儲けた商人たちが寄付した巨大な灯篭がずらりと並んでいます。力やお金を蓄えた後の使い道は「心」になるということを、この光景が示しています。
今回の旅の結論として、江戸東京は「力の都」、大阪は「お金の都」、そして京都は「心の都」と言えます。AIや自動化が進む時代、働く必要が少なくなった時、人間は何に生きる意味を見出すのか。その答えのヒントが京都という都市に詰まっているような気がします。
最終の新幹線に乗り遅れてしまったため、夜行バス「ドリームルリエ」で帰京しました。寝台列車より快適ではありませんでしたが、悟りを開いた人間にとっては快適かどうかよりも、その体験そのものを楽しめるかどうかの方が大切です。
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