
はじめに
「三国志(さんごくし)って聞いたことあるけど、どんな話?」
「吉川英治(よしかわえいじ)の三国志って面白いの?」
「登場人物が多くて難しそう…」
そんな風に思っているキミ! 大丈夫! この記事を読めば、吉川英治の『三国志』がどんな物語で、どんな魅力があるのか、バッチリ分かります。
この記事では、吉川英治『三国志』(講談社文庫 全8巻)のあらすじを、物語の流れに沿って、主要な登場人物や、物語の面白さ、かみ砕いて紹介します。
読み終わる頃には、きっとキミも三国志の世界に夢中になっているはず! 歴史のロマンあふれる英雄たちの物語を、一緒に冒険してみよう!
吉川英治『三国志』とは? - 日本人に愛される歴史物語
吉川英治の『三国志』は、今から1800年ほど前の中国、「後漢(ごかん)」という国が終わりを迎え、新しい時代が始まる激動の時代を描いた歴史小説です。
原作は中国の『三国志演義(さんごくしえんぎ)』という物語ですが、吉川英治先生は、この壮大な物語を、日本人にも分かりやすく、面白く読めるように書き直してくれました。だから、歴史がちょっと苦手な人や、長い物語を読むのが初めての人でも、きっと楽しく読み進めることができるはずです。
物語の舞台は、 腐敗した政治や、農民の反乱によって国が乱れに乱れた時代。そんな中、「我こそは!」と立ち上がった英雄たちが、それぞれの正義や野望を胸に、中国全土で激しい戦いを繰り広げます。
吉川英治版『三国志』の最大の特徴は、なんといっても 魅力的なキャラクター描写と 人間ドラマです。
正義感あふれるリーダー、最強の武将、天才軍師、ずる賢い策略家… 個性豊かな英雄たちが、悩み、苦しみ、時には喜び、時には裏切りながら、必死に生き抜く姿が、私たちの心を強く打ちます。まるで自分がその時代にいるかのような臨場感(りんじょうかん)で、読者を物語の世界へと引き込んでくれるのです。
主要な登場人物紹介 - キミの推しは誰?
『三国志』には、たくさんの魅力的な人物が登場します。ここでは、物語の中心となる英雄たちをピックアップして紹介します!

蜀(しょく) - 人徳と義の国を目指す
- 劉備 玄徳(りゅうび げんとく)
- 物語の主人公の一人。漢王朝の血を引くとされ、民衆を思いやる優しい心(仁徳 - じんとく)を持つリーダー。最初は小さな勢力しか持っていませんでしたが、多くの人々に慕われ、関羽、張飛といった仲間たちと共に、乱れた世を正そうと立ち上がります。「民のため」という強い信念で、どんな困難にも立ち向かう姿は、まさに理想のリーダー像!
- 関羽 雲長(かんう うんちょう)
- 劉備、張飛と「桃園(とうえん)の誓い」を結び、義兄弟となった最強クラスの武将。長いひげがトレードマークで、青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)という巨大な刀を自在に操ります。義理人情に厚く、一度誓った約束は絶対に守る、まさに「義」の人。その武勇と忠義心は、敵からも尊敬されるほどでした。
- 張飛 翼徳(ちょうひ よくとく)
- 劉備、関羽の義兄弟。蛇矛(だぼう)という特別な槍(やり)を使いこなす、ものすごいパワーを持った猛将(もうしょう)。短気で豪快(ごうかい)な性格ですが、劉備への忠誠心は誰よりも強く、戦場では「一騎当千(いっきとうせん)」(一人で千人の敵を相手にできるほど強い)の活躍を見せます。お酒好きなのが玉にキズ?
- 諸葛亮 孔明(しょかつりょう こうめい)
- 「天才軍師」といえばこの人! 劉備が三度も彼の庵(いおり)を訪ねて仲間になってもらった「三顧(さんこ)の礼」のエピソードは超有名。天気予報から人心掌握(じんしんしょうあく - 人の心をつかみ、動かすこと)、奇想天外(きそうてんがい)な作戦まで、何でもこなすスーパー軍師です。彼の知略が、蜀の国を何度もピンチから救います。「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」(規律を保つために、たとえ愛する者であっても違反者は厳しく処分すること)など、彼にまつわる故事成語(こじせいご)もたくさんあります。
魏(ぎ) - 力と才能で天下を目指す
- 曹操 孟徳(そうそう もうとく)
- 三国志最大の英雄の一人であり、劉備の最大のライバル。非常に頭が良く、政治も軍事も、さらには詩や文学の才能にも恵まれた超人です。「治世(ちせい - よく治まった世)の能臣(のうしん - 有能な家臣)、乱世(らんせい - 乱れた世)の奸雄(かんゆう - ずる賢い英雄)」と評されるように、目的のためなら手段を選ばない冷徹(れいてつ)さも持ち合わせていますが、有能な人材を積極的に登用(とうよう)し、魏という強大な国を作り上げました。彼の行動や言葉には、現代のリーダーシップにも通じるヒントがたくさん隠されています。
呉(ご) - 江南の地を守り抜く
- 孫権 仲謀(そんけん ちゅうぼう)
- 父・孫堅(そんけん)、兄・孫策(そんさく)の跡を継ぎ、中国南部の豊かな土地「江南(こうなん)」を支配した若き君主。決断力があり、周瑜(しゅうゆ)や魯粛(ろしゅく)といった優秀な部下たちの意見をよく聞き、国をまとめました。赤壁(せきへき)の戦いでは、劉備と協力して曹操の大軍を打ち破るなど、重要な役割を果たします。内政(ないせい - 国の政治)にも力を入れ、呉を長く安定した国にした名君です。
その他にも魅力的な人物がたくさん!
- 呂布 奉先(りょふ ほうせん): 三国志最強の武将と名高いが、裏切りを繰り返す。「人中の呂布、馬中の赤兎(せきと)」(人の中には呂布という傑出した勇者がおり、馬の中には赤兎という天下の名馬がいる)と言われるほど、彼と彼の愛馬・赤兎馬は有名。
- 貂蝉(ちょうせん): 美しさを武器に、董卓(とうたく)と呂布の間を引き裂いたとされる絶世の美女。物語に華を添える存在です。
これらの人物以外にも、数えきれないほどの英雄、豪傑、策士、美女たちが登場し、物語を彩ります。きっとキミのお気に入りのキャラクターが見つかるはず!

物語のあらすじ(ネタバレ注意!) - 英雄たちの激動のドラマ
さあ、いよいよ物語の核心へ!
吉川英治『三国志』がどんな風に進んでいくのか、大きな流れを追いかけてみましょう。(物語の結末にも触れるので、ネタバレが気になる人は注意してね!)
黄巾の乱と英雄たちの出会い

物語は、後漢王朝の末期、政治が乱れ、民衆が苦しんでいた時代から始まります。「黄巾(こうきん)の乱」という大規模な農民反乱が起こり、国中が大混乱に陥ります。
この乱を鎮圧(ちんあつ)するために立ち上がったのが、 劉備、関羽、張飛 の三人。彼らは、とある桃園で出会い、「我ら三人、生まれし日は違えども、死す時は同じ日同じ時を願わん」と、兄弟の契(ちぎ)りを結びます。これが有名な 「桃園の誓い」 です。
同じ頃、若き日の 曹操 も、この乱の鎮圧で才能を発揮し、頭角(とうかく)を現し始めます。 孫堅 (孫権の父)も、この戦いで活躍しました。黄巾の乱は、後の英雄たちが歴史の表舞台に登場するきっかけとなったのです。
董卓の専横と反董卓連合軍
黄巾の乱は収まったものの、今度は 董卓 という横暴(おうぼう)な武将が都・洛陽(らくよう)で権力を握り、好き放題を始めます。彼は幼い皇帝を操り、逆らう者を次々と殺害。人々は董卓の 暴政に苦しめられました。
この状況を見かねた各地の諸侯(しょこう - 地方の領主)たちは、董卓を倒すために連合軍を結成します。この連合軍には、曹操、孫堅、劉備たちも参加。連合軍は、董卓軍の猛将・ 呂布 の活躍に苦戦しますが、次第に董卓を追い詰めていきます。
しかし、連合軍内部でも足並みがそろわず、結局、董卓を取り逃がしてしまいます。董卓は都を長安(ちょうあん)に移しますが、最後は美女・ 貂蝉 を巡る策略によって、養子(ようし)である呂布に裏切られ、殺されてしまうのでした。
群雄割拠の時代へ - 曹操の台頭、劉備の放浪

董卓が死んだ後、中国は「群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)」と呼ばれる時代に突入します。各地の有力者たちが、それぞれ自分の領土を広げようと争い始めるのです。
この中で、最も力を伸ばしたのが 曹操 です。彼は、混乱の中で行き場を失っていた献帝(けんてい - 後漢最後の皇帝の一人)を保護し、「皇帝を守る」という大義名分(たいぎめいぶん)を手に入れます。優れた戦略と、才能ある人材を積極的に登用する力で、次々とライバルたちを打ち破り、中国北部を支配下に置きました。
一方、 劉備 は、人徳はあってもなかなか自分の国を持つことができず、各地を放浪(ほうろう)する苦しい時期が続きます。しかし、どんな時も民衆を大切にし、義を重んじる彼の周りには、関羽、張飛をはじめ、彼を慕う人々が集まり続けました。
三顧の礼と赤壁の戦い - 天下の流れが変わる

なかなか勢力を拡大できない劉備でしたが、彼の運命を大きく変える出来事が起こります。それは、 諸葛亮孔明 との出会いです。
劉備は、荊州(けいしゅう)の田舎に隠れ住んでいた天才軍師・孔明の噂を聞きつけ、彼を仲間に迎えようと決意します。孔明はなかなか会ってくれませんでしたが、劉備は諦めず、三度も孔明の庵を訪ねます。その熱意に心を打たれた孔明は、ついに劉備に仕えることを決意。これが 「三顧の礼」 です。
孔明を得た劉備軍は、まるで生まれ変わったかのように強くなります。そして、ついに歴史を大きく動かす戦いが起こります。それが 「赤壁(せきへき)の戦い」 です。
中国北部をほぼ手中に収めた曹操は、大軍を率いて南下し、残る劉備と 孫権 (父・孫堅、兄・孫策の後を継いで呉の君主となっていた)を滅ぼそうとします。絶体絶命のピンチに陥った劉備と孫権は、同盟を結び、曹操軍に立ち向かうことを決意します。
兵力では圧倒的に不利な劉備・孫権連合軍でしたが、孔明の奇策(きさく)と、呉の司令官・ 周瑜(しゅうゆ) の活躍、地の利を活かした火攻めによって、長江(ちょうこう - 中国の大河)上で曹操の大軍を打ち破るという、奇跡的な大勝利を収めるのです。
この赤壁の戦いでの敗北により、曹操の天下統一の夢は一旦頓挫(とんざ)。劉備はこの勝利をきっかけに、荊州の一部と、さらに西の益州(えきしゅう - 後の蜀の地)を手に入れ、ついに自分の国を持つための基盤(きばん)を築くことに成功します。
三国鼎立 - 蜀、魏、呉の時代へ

赤壁の戦いを経て、中国は 魏(ぎ)・蜀(しょく)・呉(ご) の三国が並び立つ時代、すなわち 「三国時代」 へと突入します。
- 魏: 曹操が建国の基礎を築き、その息子・ 曹丕(そうひ) が後漢の皇帝から位を譲り受ける形で正式に皇帝となり、魏王朝を開きます。中国北部を中心に最も広大な領土と強大な国力を持ちます。
- 蜀: 劉備が益州を平定(へいてい)し、成都(せいと)を都として皇帝に即位。漢王朝の復興(ふっこう)を掲げ、孔明を丞相(じょうしょう - 総理大臣のような役職)として国づくりを進めます。
- 呉: 孫権が江南の地で皇帝となり、建業(けんぎょう - 現在の南京)を都とします。豊かな土地と水軍力を背景に、魏や蜀と渡り合います。
こうして、三つの国が互いに牽制(けんせい)しあい、時には同盟を結び、時には激しく争う、複雑な時代が幕を開けるのです。
孔明の北伐と五丈原の戦い - 蜀の夢、孔明の願い

蜀の丞相となった孔明は、亡き劉備の遺志(いし)を継ぎ、漢王朝復興のため、魏を打倒するために、何度も北伐(ほくばつ - 北方の魏を攻めること)を敢行(かんこう)します。
孔明は、数々の 独創的な戦略や、木牛流馬(もくぎゅうりゅうば - 食料を運ぶためのからくり仕掛けの輸送具)のような発明品を駆使して、魏の名将・ 司馬懿 仲達(しばい ちゅうたつ) と、息詰まるような知略戦を繰り広げます。
しかし、国力で劣る蜀にとって、北伐は非常に困難な戦いでした。孔明は病に倒れながらも、最後の力を振り絞って指揮を執りますが、ついに 五丈原(ごじょうげん) という場所で、志半ば(こころざし なかば)で病死してしまいます。
孔明の死は、蜀にとって大きな打撃(だげき)となりました。「死せる孔明、生ける仲達を走らす」(死後もその威光が残っていて、生きている者を恐れさせるというたとえです)というエピソードは、孔明の偉大さを物語っていますが、彼の死後、蜀は次第に衰退していくことになります。
三国の終焉と晋による統一
英雄たちが次々と世を去り、時代は移り変わっていきます。
蜀は、孔明亡き後、有能な人材を欠き、内政も乱れ、魏の攻撃によって滅亡(めつぼう)してしまいます(263年)。
魏では、曹操の一族に代わって、孔明のライバルであった 司馬懿 の一族が実権(じっけん)を握るようになります。司馬懿の孫である 司馬炎(しばえん) が魏の皇帝から位を奪い、新たに 晋(しん) という国を建国します(265年)。
残る呉も、名君・孫権の死後、内紛(ないふん)などで国力が衰え、最終的には晋によって滅ぼされてしまいます(280年)。
こうして、約100年近く続いた乱世と三国時代は終わりを告げ、再び晋によって中国は統一されるのです。吉川英治の『三国志』は、この晋による統一をもって、壮大な物語の幕を閉じます。
吉川英治『三国志』の魅力とは? - なぜ人々を引きつけるのか

ここまであらすじを追ってきましたが、吉川英治『三国志』の魅力は、単なる歴史の流れを知るだけではありません。
- 英雄たちの生き様と人間ドラマ: 正義、忠誠、野望、裏切り、友情、親子愛… 登場人物たちが示す様々な感情や生き様は、現代を生きる私たちにも深く響きます。完璧(かんぺき)ではない、人間味あふれる英雄たちの姿に、共感したり、反発したりしながら、読者は物語に引き込まれていきます。
- 手に汗握る戦いと知略戦: 赤壁の戦いのような大規模な合戦(かっせん)の迫力(はくりょく)ある描写や、孔明と司馬懿が繰り広げるような、知恵と知恵がぶつかり合うスリリングな策略(さくりゃく)の応酬(おうしゅう)は、読者を飽きさせません。戦いのシーンは、まるで映画を見ているかのような臨場感です。
- 読みやすい文章と物語の面白さ: 吉川英治先生の文章は、テンポが良く、非常に読みやすいのが特徴です。難しい歴史の話も、まるで冒険小説を読むかのように、ワクワクしながら読み進めることができます。個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、純粋にエンターテイメントとしても一級品です。
- 現代にも通じる教訓: リーダーはどうあるべきか、人は何のために生きるのか、信頼関係はどう築くのか… 三国志の物語の中には、現代社会でも通用するような、たくさんの教訓やヒントが散りばめられています。読書を通して、人間関係や社会について深く考えるきっかけを与えてくれるでしょう。
まとめ:なぜ今、吉川英治『三国志』を読むべきなのか?
吉川英治の『三国志』は、単なる古い歴史物語ではありません。そこには、時代を超えて私たちの心を揺さぶる、普遍的(ふへんてき)なドラマと、生きるヒントが詰まっています。
- 歴史小説の入門に最適!: 難しそう…と敬遠(けいえん)していた人も、吉川英治版ならきっと楽しめるはず。
- 魅力的なキャラにハマる!: 個性豊かな英雄たちの中から、きっとあなたの「推し」が見つかる!
- 人間や社会を学べる!: 英雄たちの生き様を通して、リーダーシップや人間関係について考えるきっかけに。
- とにかく面白い!: ドキドキハラハラの展開に、ページをめくる手が止まらなくなる!
ぜひこの機会に、吉川英治『三国志』の世界に飛び込んで、英雄たちの熱い生き様に触れてみてください。きっと、あなたの心に残る、大切な一冊になるはずです!
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